
トゥール・スレン博物館とキリングフィールド訪問記|ポル・ポト政権の歴史を学ぶ【プノンペン観光】
はじめに
こんにちは、スタッフのAOです!シェムリアップ拠点の日系現地旅行会社ですが、今回はシェムリアップを飛び出し、プノンペンを訪れてきました。シェムリアップとプノンペンは約330kmバスで約6時間。今回は夜行(寝台)バスを利用して移動しました。

突然ですが、プノンペン観光と聞いて皆さんはどこを思い浮かべますか?カンボジア最大の観光地であるシェムリアップにはアンコールワットがありますが、首都プノンペンには、国の歴史を語るうえで欠かせない場所があります。
2025年には、トゥール・スレン虐殺博物館、チュンエク・キリングフィールド、M-13刑務所跡が「カンボジア記念遺産群」としてユネスコ世界遺産に登録されました。アンコールワットのような華やかな世界遺産とは異なり、大量虐殺の記憶を未来へ伝える「負の世界遺産」です。
この記事では、実際に訪れたトゥール・スレン博物館とキリングフィールドについて、歴史や見どころ、見学情報、そして現地で感じたことをご紹介します。
訪れたきっかけ
私自身、中学校や高校の歴史の授業でポル・ポト政権について名前は習いました。しかし、教科書では数行ほど触れられる程度で、具体的にどのような出来事だったのかまでは知りませんでした。せっかくカンボジアに来たなら、観光だけでなく、この国が経験した悲劇についても学びたいと思い、トゥール・スレン博物館とキリングフィールドを訪れることにしました。
ポル・ポト政権とは
ポル・ポトは1975年から1979年までカンボジアを支配したクメール・ルージュ(共産主義勢力)の指導者です。
彼らは極端な農業中心社会を目指し、都市に住む人々を農村へ強制移住させました。学校や市場、貨幣制度は廃止され、知識人や教師、医師、外国語を話せる人などは「革命の敵」とみなされ、多くの人が逮捕・処刑されました。
さらに、飢餓や過酷な労働によっても多くの人々が命を落とし、犠牲者は約170万〜200万人といわれています。これは当時の人口のおよそ4分の1にあたり、人口比で見ても世界史上まれな大量虐殺の一つとされています。
その歴史を伝える代表的な場所が、今回訪れたトゥール・スレン博物館とキリングフィールドです。
◼︎2025年に世界遺産へ登録
2025年、トゥール・スレン虐殺博物館、チュンエク・キリングフィールド、M-13刑務所跡は「カンボジア記念遺産群」としてユネスコ世界遺産に登録されました。アンコールワットのような文化遺産ではなく、大量虐殺の記憶を未来へ伝えるための「平和への祈りを未来へ伝える世界遺産」です。

トゥール・スレン博物館
今回訪れた2つの施設は、どちらもカンボジアの首都プノンペンにあります。アンコールワットのあるシェムリアップからは飛行機で約1時間、バスで5〜7時間ほどです。
2つ合わせて半日ほどあれば見学できますが、歴史の流れを理解しやすいので「トゥール・スレン博物館→キリングフィールド」の順番がおすすめです。ショッキングな展示が多く、私自身あまり写真を撮る気持ちにはなれませんでした。
トゥール・スレン博物館は、もともと高校だった建物です。しかしポル・ポト政権下では「S-21」と呼ばれる秘密収容所・尋問施設へと姿を変えました。
この施設では約12,000〜20,000人が収容されたとされ、生き残ったのはわずか数人。機械修理や絵画など、政権側に必要とされた特殊な技術を持つ人だけが生存できたとされています。本来、子どもたちが学ぶ場所だった高校が、人々を拷問する施設へ変えられてしまったという事実は、簡単には受け入れられるものではありませんでした。
営業時間:8:00〜17:00
入場料:5ドル
オーディオガイド:5ドル(日本語あり)
アクセス:プノンペン中心部からタクシーで約10〜15分
所要時間:約1時間半〜2時間
📍https://maps.app.goo.gl/uw1ArZwiR4BLA2M27?g_st=ic
日本語のオーディオガイドはとても分かりやすく、元収容者の証言や施設の歴史を聞きながら見学できます。展示には番号が付いており、順路に沿って進めるため歴史を理解しやすくなっています。時間がない方は重要な展示だけを巡るコースも用意されています。慰霊施設でもあるため、肩や膝が隠れる服装がおすすめです。
拷問に使われたベッド

各部屋には実際に使われていた鉄製のベッドが残され、壁には施設が解放された当時の写真が展示されています。写真にはベッドに拘束されたまま亡くなった人々や、床に飛び散った血痕が写されており、言葉を失いました。
独房

レンガや木材で仕切られた独房は、大人一人がようやく入れるほどの狭さです。
オーディオガイドでは実際に収容されていた方の証言を聞くことができ、当時の恐怖や絶望がより現実味をもって伝わってきました。このほかにも、収容された人々の写真や拷問の様子を描いた絵など、目を背けたくなる展示が数多く残されています。
キリングフィールド
トゥール・スレンなどで拘束された人々が連行され、処刑・埋葬された場所です。
現在は慰霊施設として整備されており、敷地内には多くの犠牲者の頭蓋骨が納められた慰霊塔があります。カンボジア国内には300か所以上のキリングフィールドが存在するといわれています。
シェムリアップにもキリングフィールドはありますが、展示内容や資料、オーディオガイドの充実度を考えると、歴史を深く学びたい方にはプノンペンがおすすめです。
営業時間:7:30〜17:30
入場料:3ドル
オーディオガイド:3ドル(日本語あり)
アクセス:プノンペン中心部からタクシーで約20〜30分
所要時間:約1〜1時間半
📍https://maps.app.goo.gl/hzShqrd4m2umijYx6?g_st=ic
日本語のオーディオガイドを聞きながら順路を歩いていくと、処刑が行われた場所や慰霊碑を巡ることができます。静かな敷地ですが、その静けさがかえって当時の悲劇を強く感じさせました。また、雨季には地中から衣服の切れ端や骨の一部が地表へ現れることもあるそうです。ここは展示施設ではなく、多くの人々が命を落とした現場なのだと改めて実感しました。こちらも肩や膝が隠れる服装がおすすめです。
◼︎キリングツリー
この木は、多くの赤ちゃんや子どもたちが犠牲になった場所として知られています。
現在は木に多くのミサンガが結ばれ、犠牲となった子どもたちへの祈りが捧げられています。当時の政権には「敵だけでなく、その家族も将来反抗する可能性がある」という考えがあり、多くの家族が命を奪われました。
目の前で子どもを失った家族のことを思うと、胸が締め付けられる思いでした。
◼︎マジックツリー
処刑や拷問の際に聞こえる悲鳴を周囲へ漏らさないため、この木にはスピーカーが設置され、大音量で革命歌などが流されていたとされています。
現在は静かな木が立っていますが、オーディオガイドを聞きながらその場所に立つと、当時そこで何が起きていたのかを想像せずにはいられませんでした。

◼︎慰霊塔
敷地内には17階建ての慰霊塔があり、多くの犠牲者の頭蓋骨が安置されています。頭蓋骨には処刑方法による傷跡が残るものもあり、虐殺の現実を静かに物語っています。
数字だけでは実感できなかった犠牲者の多さを目の当たりにし、言葉が出ませんでした。
個人的な感想
教科書では数行程度しか扱われていなかった出来事が、ここまで悲惨な歴史だったとは想像していませんでした。同時に、学校教育だけではこの出来事の深刻さを知る機会は限られているとも感じました。
サザンオールスターズの「ピースとハイライト」には、「教科書は現代史をやる前に時間切れ、そこが一番知りたいのに何でそうなっちゃうの?」という歌詞があります。まさにその通りだと思いました。歴史教育は古代から現代へと進むため、どうしても現代史は駆け足になりがちです。私が通っていた学校でも同じ印象でした。もちろん学校で教える内容には限りがあります。それでも、現代史はもっと学ぶ機会があってもいいのではないかと感じます。
一方で、学校教育だけを批判しても何も変わりません。
オーディオガイドの最後には、「ここで見たこと、感じたことを周りの人へ伝えてください」というメッセージがありました。私はその言葉がとても印象に残りました。だからこそ、この悲劇を少しでも多くの人に知ってもらいたいと思い、この記事を書いています。
今回紹介した写真以外にも、目を背けたくなるような展示が数多くあります。実際にその場所へ立ち、自分の目で見ることで、人間の残虐さや平和な日常のありがたさなど、さまざまなことを考えるきっかけになるはずです。
カンボジア旅行ではアンコールワットを訪れる方がほとんどだと思います。もし時間に余裕があれば、ぜひプノンペンにも足を運び、この国が歩んできた歴史に触れてみてください。決して楽しい観光地ではありません。しかし、人類が同じ過ちを繰り返さないためにも、一度は訪れる価値のある場所だと私は思います。
なお、展示内容は非常に衝撃的です。見学中に気分が悪くなる方もいるかもしれませんので、無理のない範囲で見学してください。
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